あなたの看護師の仕事のやりがいは何ですか?
看護師の仕事は、人の命や健康に関わる専門性の高い職種で、大変で過酷な仕事であるがゆえにやりがいを感じやすい仕事と世間では言われています。
やりがいを見いだすことができれば、「看護師になってよかった」と思えるし、仕事を長く続けることもできますが、看護師だからといって誰もが皆やりがいを感じているかというと、実際はそうでもないのです。
看護師の中には、「仕事をしていてもやりがいを感じない」「やりがいってなんだろう…?」と思っている人は案外多いのです。
ここで、私が病棟看護師として10年間経験してきた中で感じたやりがいや看護師になってよかったと思った実際のエピソードを8シーンご紹介したいと思います。
後半は、やりがいを見つけるための秘訣もまとめましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
私が「看護師になってよかった」とやりがいを感じたエピソード8つ
ナース歴10年の私が、病棟看護師として看護師冥利に尽きる!と感じた体験談エピソードです。
「患者様から感謝の言葉や手紙をもらったとき」
内容は「初めての手術で、切除した後もどうなるのかわからずとても不安でした。でも入院日にShuKuさんがしっかり話を聞いてくれて、すごく丁寧に入院中や手術後の経過を教えてくれたので、安心して手術を乗り越えることができました。担当の看護師さんがShuKuさんで良かったです。ありがとうございました。」というものでした。
退院日はあいにく勤務日ではなかったのでお会いできなかったのですが、病棟のスタッフに手紙を渡してくれていました。
寄り添う看護をおこなうことで患者様が安心して入院生活を過ごすことができ、感謝の言葉をいただけるのは純粋にとても嬉しいことです。仕事をしていて感謝を直接伝えてもらえる機会というのはそう多くはないと思います。医療の現場で働く看護師は、患者様の身体と命に向き合う仕事のため、感謝の言葉にもより重みがあると感じています。看護師のやりがいの大半は、まさに「患者様やご家族から感謝される」ことではないでしょうか。
「悲観的になっている患者様の精神的支えになれたと感じたとき」
気晴らしになればと思い、景色が綺麗に見える場所に連れて行くと、口を利くことがほとんどなくなっていたAさんが少し会話をしてくれるようになり、他愛もない話をしていると久々に笑顔が見られました。病室に戻ると、Aさんが「今日はShuKuさんに元気をもらった!昨日は本当にもうダメだと思ったんだ。励まされてもう一度頑張ろうと思う。ありがとう、これからもどうぞよろしく。」と、目に涙を浮かべておっしゃいました。
患者様は常に病気の脅威にさらされたり、不安や恐怖心などを抱えています。病院で一番身近な存在である看護師が患者様の精神状態を把握・理解し、苦痛や不安に寄り添い、時に見守り、励ますことで悲観的だった患者様が前向きになるきっかけを与えることができたと感じた時は、看護師になって本当に良かったと思う瞬間でした。このような患者様の精神的な支えや気持ちの変化は、医師のおこなう『治療』だけで成し得ることは難しく、紛れもなく『看護の力』によるものだと実感しました。
「患者様のできることが増えて回復の兆しが見えたとき」
膝の手術をおこなった患者様が、術後のリハビリで下肢の挙上がなかなかうまくできずに悩んでいました。手術の翌週に病棟を訪れると、患者様が「ShuKuさん!足が挙がるようになったんだよ!」と言って嬉しそうに見せてくれました。カルテには、週末に一生懸命リハビリに取り組んでいた様子、看護師が「頑張りすぎないで一度肩の力を抜いてみましょう」「焦らなくても大丈夫ですよ」と声がけをおこなっていたことが書かれていました。
術後のリハビリで足がなかなか挙げられないと焦っていた患者様でしたが、看護師の声かけが精神的なサポートとなって足を挙げられるようになり、自信がついた患者様はそれからはどんどんできることが増えていき、順調に経過して杖歩行までできるようになりました。
手術後なかなか前に進めず苦しんでいた患者様が、少しずつ回復に向けてリハビリを努力して前進していく姿を見られるのはやはり大変嬉しいことです。患者様が身体的にだけではなく精神的にも元気になって苦労を乗り越え、色んなことができるようになるのは、とても感慨深いものです。
ちなみに、実習最終日にこの患者様から手紙をいただきました。「なかなか足が挙がらなくて落ち込んでいた時にShuKuさんの笑顔にとても救われました。頑張って素敵な看護師さんになってくださいね。」というものでした。その時はまだ看護学生という存在でしたが、笑顔が人の回復に繋がるのだ、ということを微力ながら身をもって体験した貴重な関わりとなりました。以降、私の看護師としてのモットーは『笑顔で接すること』でした。患者様の回復の過程に関われるという点もやりがいのひとつだと感じています。
「多職種との連携やチームワークがうまくいったとき」
この時に勤務していた乳腺外科病棟は、医師が率先してチーム医療を掲げている活気に満ちた職場でした。そのため、色んな患者様のために頻繁に多職種カンファレンスがおこなわれていました。患者様のために多くのスタッフと連携して一致団結し、目標を達成する喜びを分かち合えることは看護師のやりがいのひとつだと言えるでしょう。
また、様々な専門性の高い職種と一緒に働くことで、看護の世界だけでは知り得ないような新しい知識や発見、視野を広げることができ、自分自身の成長にも繋がります。
さらに、後輩ナースや同僚に頼りにされるだけでなく、医師から「今日はShuKuさんがいて助かった!」などと言われると、自分の知識や技術などを認めてもらえているという自信がつき、もっと信頼される存在になりたい、とモチベーションの源になり、さらに頑張ろうと思えます。
チーム医療を通して達成感や充実感を得たり、自己成長することは、看護師の仕事として大きなやりがいと言えます。
「自分が学んだ知識を患者様に実践し役立つことができたとき」
自分が学んだ新しい知識を患者様への看護に反映することで、患者様はより良い医療を提供されることになります。つまり、自分の努力が患者様の役に立っていると実感できる場面であり、非常に大きなやりがいだと言えます。人の役に立てるということは自己肯定感のアップにも繋がり、仕事に対するモチベーションのアップにもなります。
こういったケースから、認定看護師や専門看護師を目指す看護師も少なくありません。専門職としてのスキルアップもまたやりがいのひとつだと言えます。
「病院以外でも看護師としての経験が役に立ったとき」
また、自分の子どもに関しては、高熱を出した時やケガをした時、吐いたり下痢をした時、風邪をひいて咳や鼻水や痰がひどい時など、その都度、状態をアセスメントしてすぐにでも受診すべきか、例えば土日だった場合に月曜日まで様子を見れそうか、など随時判断して症状が悪化する前に対処できるよう知識や経験を活かしてきました。
このように、看護師は身内や友人、知人から病気や体調などについての相談を受けることがよくあります。また、出産してからは自分の子どもだけでなく、ママ友のお子さんについての相談を受けることも多く、日常の中でも看護や医療の知識が大いに役立ち、社会貢献ができていると感じます。
そのため、看護師は職場を離れている時もその能力が生かされる職種だと思います。人に頼りにされたり、自分の対処やアドバイスが的確であった場合に周りの人に感謝されると、看護師になって良かったとつくづく思います。
「安定した収入がある」
もし、「ストレスが溜まったからプチ移住したい!!」と考えても、看護師のような手に職がなければ、こんなに簡単に生活の拠点を変えることはできなかったかもしれません。この時の私は正直、仕事自体にやりがいを求めることはほとんどなく、収入のため、生活のため、と割り切って仕事をしていました。
厚生労働省の調査によると看護師の平均年収は、491万8300円(平均年齢41.2歳)となっていて、全職種平均487.3万円よりも上回っていることがわかります。(ただし、看護師の年収には、ボーナスや夜勤手当、時間外手当、通勤手当なども含まれています。)
都道府県や勤務先、勤務形態によっては年収の差こそありますが、看護師として働いていれば安定した収入を得られるのは一目瞭然です。たとえ仕事そのものに対してやりがいを感じることがなくても、この安定した収入を得るために大変なことがあっても頑張れるという看護師がいるもの事実です。そういった意味でも、「看護師になってよかった」と思っている人は少なからずいると言えるでしょう。
「後輩看護師の成長を感じることができたとき」
3年目にもなると、チームカンファレンスの場で後輩が自分の意見をしっかり述べて、チームの一員として自覚を持って働けるようになっており、立派に成長した姿を見るのは感慨深いものがありました。
他にも、日勤や夜勤リーダーとなってメンバーにアドバイスをする時、チームリーダーを育てるための指導をおこなう時など、看護師はチームで働く職種のため、後輩育成の場面はとても多くあります。
自分が直接関わって指導した後輩の成長はもちろんのこと、一緒に働くスタッフがどんどん知識や技術を吸収して自立していくことは心から嬉しいものです。このように仲間を育てることができるというのもやりがいのひとつになっていると感じます。
職場別のやりがいを感じる場面
次は、職場別や診療科別の看護師のやりがいについて、看護師の友人に聞いた話や看護師業界で一般的に言われていることについて、ピックアップして紹介していきたいと思います。
外来看護師のやりがい
外来看護師は、病棟看護師とは違い、患者様と接する時間は短く、関わる患者様の人数も多いです。その短時間の中で、患者様1人1人にとって安心安楽な看護を提供し、信頼関係を築いていく役割があります。定期的に通院される患者様に名前を覚えていただいたり、採血する時に指名を受けたり、頼りにされるようになるととてもやりがいを感じるものです。
また、医師の診療がスムーズに進むよう処置や書類の準備などを先回りして気を利かせておこなえるようになると、医師の信頼獲得のみならず、結果的に患者様の満足度も上がります。外来看護師は少ない人数で的確に仕事をこなさなければならず責任感も大きいため、スムーズに仕事が進んだ時には大きなやりがいを感じられるでしょう。
訪問看護師のやりがい
訪問看護師は、患者様の生活する場所で看護をおこなう役割を担っているため、より患者様に近く、家族のような存在で関わっています。病院で働く看護師よりも患者様の生活背景や人生観、家族の思いをより強く意識した関わりとなり、また、訪問看護の担当期間は数ヶ月〜数年単位と長い付き合いになることが多く、濃厚な関係性となります。それゆえに責任も重く、患者様の望む看護が提供できるとやりがいもひとしお大きいと感じます。
特に、自宅で最期を迎えたいと希望される患者様やご家族は少なくありません。どのような最期を迎えるかを患者様やご家族の希望に寄り添いながら看護ケアをおこなえることは、大きなやりがいとなるでしょう。
産婦人科看護師のやりがい
産婦人科看護師は、新しい命の誕生に立ち会える唯一の看護師です。赤ちゃんの誕生は何度経験しても素晴らしく尊いものです。奇跡とも言える生命の神秘に立ち会えることは大変喜ばしいことです。
反対に、女性特有の病気で苦しむ患者様の看護をするのも産婦人科看護師の役割です。そして、この両極端な状況を同時に経験するという特徴的な面もあります。
両方の命の重みを知っているからこそ、産婦人科に関わる全ての経験がやりがいに繋がると言っても過言ではないと思います。
救急看護師のやりがい
救急看護師は、患者様の生と死が交差する過酷な現場で、常に1分1秒を争う状況下で働いています。救命救急のチームが一丸となって医療をおこない、患者様の一命を取り留めることができた時には安堵感や達成感が大きく、やりがいも強く感じられます。
まさに命を救う最前線である救命救急は、非常に過酷な現場であるとともにやりがいも大きい職場だと感じます。
やりがいエピソードをまとめてみた結果、以下のような気付きがありました。
- 看護師がやりがいを感じるシーンや職場は様々である。
- やりがいの形や魅力は受け取る人それぞれで違う。
- 何をやりがいと捉えるかは、個人の主観によるところが大きい。
やりがいがない、やりがいを感じない看護師に伝えたい3つのこと
今回、ナース歴10年の私が今までに感じてきたやりがいのエピソードや職場別のやりがいについてまとめてみました。しかしながら、以上のようなやりがいエピソードを読んでも、「そんなのはきれいごとだ」と思う看護師も少なからずいることでしょう。「看護師の仕事は大変だからこそやりがいがある」とポジティブに捉える人もいれば、「毎日大変すぎてやりがいや目標を見出す余裕なんてない」と考える人がいるのも当然のことです。
やりがいはなくても大丈夫!
実際に、私自身があまりにも忙しくて疲弊していた時期や体に不調を感じていた時は、やりがいのやの字すら考えることができませんでした。
あくまでも個人的な意見ですが、看護師の仕事をする上で、例えば『安定した収入』を得ることが目的であれば、仕事内容にやりがいを感じなくても何もおかしいことはなく、普通のことだと思うのです。看護師として働く人の背景は様々ですからね。
手に職をつけて高給与をいただくために看護師をやっている、というのも立派な動機ですし、やりがいがないからといって自己嫌悪する必要は全くありません。
私が離島の病院にリフレッシュ&収入目的で転職したように、ただただ職場でやるべき仕事を真面目に手を抜かずにきちんとやれていればそれで十分だと思います。
最初は『収入のため』と始めた職場であったとしても、時間が経過するとそれまで感じたことのなかったやりがいを感じられるようになる可能性だってあります。反対に、他の職場で何かやりがいを見つけたい!と気持ちが変わったりすることもあります。
私は離島の病院でリフレッシュした後、別の環境でもっと学びを深めたい!やりがいを求めたい!と気持ちが徐々に変化していきました。そしてどんな行動をしたかというと、都市圏の大学病院に思いきって転職しましたよ!
やりがいは別になくたっていいし、やっぱりやりがいを感じたいな〜と思うのであれば、その時々で置かれた環境に合わせて自分にとってベストな方向性に変えていけば良いのです。
やりがいを感じたいのにやりがいがない!と悩むナースへ
もし、『看護師としてやりがいを感じたいのにやりがいを見つけられない…』と悩んでいる人がいるのであれば、ぜひ伝えたいことがあります。
後ろめたさを感じなくてもよい
まず、同僚や先輩看護師など周りで働く人達はやりがいを見出しているのに自分にはない…ともどかしい気持ちになるかもしれませんが、後ろめたさを感じる必要は全くありません。
ご紹介してきたエピソードのように、やりがいを感じるシーンや職場というのは人それぞれで個人の主観によるものが大きいので、必ずしも看護師がみんな同じように感じ取れるわけではありません。多忙な看護業務の中でやりがいを感じられるようになるためには、やはりそれなりの余裕と時間が必要で、頭と体がついてこそです。
やりがいがなかなか見つけられない時期は、無理にやりがいを探すのではなく、目の前の仕事を誠実に淡々とコツコツと続けていけば、ふとした瞬間にやりがいを感じられるようになるものです。
なぜ看護師になろうと思ったのか?を思い出す
日々の多忙な業務に追われていると、自分がなぜ看護師になろうと思ったのか?を思い出すことはそう多くありませんよね。
私は高校入学の前に、手術のために入院した病院で担当だった看護師が、とても親身でいつもニコニコ笑顔だったので、手術や入院生活に不安を感じることなく過ごすことができたという経験がありました。その時に、人の役に立てる医療者っていいな、患者様と接する時間が長い看護師の仕事ってなんだか面白そう、という感情を抱き、それが看護師を目指すきっかけとなりました。
「看護師として自分はどうありたいか」を考え、進むべき道に迷いが生じた場合にはいつも初心に返るようにしていました。
- 看護師を目指すきっかけになったことを思い出す。
- どんな看護師になりたいと思っていたかを思い出す。
- 看護をしていて自分の心が満たされた経験を振り返る。
このように原点に戻ることで、やりがいを見つけるためのヒントを得ることができます。
自分が仕事に求めることは何か?を考える
私がやりがいを感じるシーンや職場がそれぞれ違っていたように、何にやりがいを感じるかは看護師1人1人で違います。仕事に対して『どんなことを大切にして、優先したいのか』を具体的に考えてみると良いでしょう。
- どういう仕事内容を求めているのか。(急性期、外来、介護分野、ホスピス、訪問看護など)
- どんな時に仕事が楽しいと感じるか。(患者様との関わり、看護スキルを磨くこと、多職種との連携など)
- 仕事や勤務条件で妥協できる部分はあるか。(給与、夜勤の有無、休日など)
など、改めて自分の仕事に対する思いを見つめ直すことが重要です。どんな価値観を持ち、どんな自分になりたいのか、そこまで掘り下げて考えられるようになると、やりがいを見出せる日は近いかもしれません。
私の場合、専門職として自己成長することにやりがいを感じるのだと気づき、認定看護師などのスキルアップを目指すために、転職の最終地点として、最新の医療や看護を学ぶことができ、教育体制が充実している大学病院を選びました。
一例ですが、患者様との信頼関係やじっくりと時間をかけて関わることにやりがいを感じるタイプの看護師であれば、リハビリ病院や介護分野・訪問看護、ホスピスなどが向いているかもしれません。
やりがいを見つけるための秘訣
自分の価値観にあった職場選びってどういうこと??と思いますよね。
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もし、今やりがいがなくて悩んでいるのであれば、私がその時々のステージで離島の病院を選んだり、大学病院を選んできたように、あなたの価値観に合う職場を見つけて、仕事のやりがいを見出し、持っている能力を存分に発揮して仕事を続けていって欲しいなと思います。